いまCDは量子化数16bit、サンプリング周波数44.1kHzでフォーマットされていますが、
CDからMDにコピーするというのが一般的で、「MDはCDのコピーを取るものである。
つまり16bitである」という図式が自然に構築されているのであります。
ただし、MDは基本的には16bitで管理されています。これはCDなどの音楽に対する
量子化数ではないので注意して下さい。
MDは今後発売されるスーパーオーディオCDやDVDオーディオなどの
高ビットレート(量子化数が20bitや24bit)のものにも柔軟に対応できるように
なっています。この場合20bitや24bitが16bitに変換されるのではなく、
そのビットレートのままATRACにより圧縮作業が行われます。つまりCDの16bitで
録音したときよりも、もっと情報が多い20bitや24bitが圧縮されるので、
より表現力の豊かな音楽を録音することが可能になるのです。
ATRACのビット数
MDの広告で、ATRACの演算処理が24bitとよく書かれていますが、これは何でしょう?
ATRACは音楽データを圧縮・解凍(展開)を行う場所ですが、ここでの処理能力が
24bitの大きさであると言うことです。音楽データの処理は決められた時間内で終わらせ
なければいけません。たとえば1秒の音楽データを10秒かけて圧縮していたのでは、
リアルタイム録音が出来ません。
簡単に話を進めると、100個のデータを4回の作業で処理しなければいけないとします。
100個を4回でと言うことなので、1回あたり25個のデータを処理できれば終了します。
24bitの場合、処理するためのデータエリアは24個用意されていますので、1回あたり
1個の損失が発生しますが、合計96個のデータを処理できます。
しかし20bitの場合はどうでしょう。1回あたりの損失は5個に増え、16bitの場合は9個に
なります。損失分が多いということは、処理前のデータと処理後のデータでは情報量的に
差が出てしまうことになり、データの劣化となってしまいます。
(あくまでも考え方なのでATRAC内部で行われていることとは違います)
しかし24bitと言ってもデータだけではなく、ATRAC-DSP内部のプログラムなども24bitで
構成されているため、たくさんの情報を扱えると共に高速に処理が出来るようになっています。
ATRAC-DSPのI/Oポート幅
ATRAC-DSPに音楽データが入ってくるのですが、当然音楽データの出入り口が存在します。
その出入り口にも幅と言うものがあり、一度に入ってこれるデータ量が決まっています。
その幅(ビット幅)はATRAC Version
4.5(Type-R)で20bitとなっています。
あれ?と思った方もおられるでしょう。そうです。ATRAC-DSP内部が24bitなのに
I/Oの幅が20bitでは、ATRAC-DSP内部に単位時間あたりに入ってくる音楽データは
20bitでしかないのでは?ということです。実はこれでいいんです。
ATRAC-DSP直前の量子化数
通常CDデッキのデジタルアウトは16bit、MDデッキのデジタルインも16bit、
つまりCDからMDにコピーするとき、MDのATRAC-DSPに音楽データが入る前も
16bitです。ATRAC-DSPの幅は20bitなので16bitのデータは余裕で入ってこられ、
24bitの処理を受けます。これが一般的な図式です。
しかし今のMDデッキにはそれなりの高音質テクノロジーが搭載されています。
ソニーではWBS(Wide Bit Stream)があります。これは高ビットテクノロジーで、
ATRACを含むデジタル処理系を20bitで構成すると言うものです。
WBSは基本的に24bitの入出力の幅を持ち、CDからデジタルインした16bitデータを
20bitに変換し、ATRAC-DSPに転送します。ここでなぜATRAC-DSPのI/Oポートが20bitで
十分なのかが分かります。
ケンウッドではD.R.I.V.Eテクノロジーがあります。これもCDからの16bitデータを
20bit(D.R.I.V.E2では24bit)に引き上げ処理をします。
ここでは20bitに引き上げるとありますが、実際は「20bit相当精度」です。
16bitがそのまま20bitになるわけではないので、注意して下さい。
※ケンウッドのカタログでは、D.R.I.V.E2で24bitに引き上げたデータを24bitのまま
ATRAC-DSPに送っているような表記になっており、I/O関係がどのようになっているか
調査が必要ですね。