アドレスの表記は基本的に16進数です。08CC(16)の「(16)」は16進数を表し、「(10)」の場合は10進数を表します。
ディスクの内周から外周に向かって次の6つのエリアが存在しています。
エリア | エリアの使用目的 | クラスタ番号 | アドレス
(クラスタ.セクタ.サウンドグループ) |
TOC | MD自身の情報が書き込まれています。
書き換えは不可能です。 |
クラスタ0
クラスタ1 |
0000.00.0〜0001.1F.A |
Power Calibration | レーザー光のパワー調整用のエリアです。ここでディスクに合った強さに調節します。 | クラスタ2 | 0002.00.0〜0002.1F.A |
U-TOC | トラック情報(曲数、フラグメンテーション)
ディスク・トラックネーム情報(ディスク名、曲名) |
クラスタ3
から クラスタ5 |
0003.00.0〜0005.1F.A |
Reserved | クラスタ6
から クラスタ49 |
0006.00.0〜0031.1F.A | |
Recording | 音楽情報を書き込みます | クラスタ50
から クラスタ2250 |
0032.00.0〜08CB.1F.A |
AIGP | 08CC.00.0〜093F.1F.A |
ディスク内周←−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−→ディスク外周
中心<[TOC][Power Calibration][U-TOC][Reserved][Recording][AIGP]>外周
Recordingエリアは、アドレス:0032.00.0〜08CC.1F.Aに存在します。1アドレス=1クラスタ
に相当しますので、「08CC(16)-0032(16)=089A(16)=2202(10)」より、Recordingエリアには、
「2202クラスタ」存在することが分かります。
MDでは音楽情報をこの1クラスタ単位に書き込みます。ではこの1クラスタを分解してみましょう
。
1クラスタ
←−−→←−−−−−−−−−−−−32セクタ−−−−−−−−−−−−−→
■■■▲□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
■▲□各々1つが1セクタに相当します。
■ | 3セクタ | リンクセクタであり、CIRC用の捨てセクタです。 |
▲ | 1セクタ | データセクタで、CD−Gなどと同じようなグラフィックデータなどが格納されます。 |
□ | 32セクタ | 音楽データ(圧縮された)が格納されます。
1セクタがMD編集における1ステップ(0.06秒)に相当します。 |
クラスタでの□□□□・・・部分の2セクタ(□、2個分)を分解すると。
2セクタ
← 1セクタ → ← 1セクタ
→
[0][1][2][3][4][5][6][7][8][9][A]
1セクタは5.5サウンドグループになりますが、管理上2セクタ(11サウンドグループ)で扱います。
[X]1つが1サウンドグループに相当します。
1セクタ目は0〜5サウンドグループの左チャンネルまで、2セクタ目は5サウンドグループの右チャンネルから
10サウンドグループまでになります。
[X] | 11サウンドグループ | 1サウンドグループが、MD編集における1フレーム(0.01秒)に相当します。 |
2セクタ内に存在する[0][1][2]・・・部分の1サウンドグループ([X]、1個分)を分解すると。
1サウンドグループ
←−−−−−− 424バイト −−−−−−→
<*****L-ch Data*****:*****R-ch
Data*****>
424バイトの中に512サンプルのデータが格納されています。
* | 512サンプル | 左右チャンネルのサンプルデータが格納されています。 |
この32のセクタには0〜31までのエリアとして管理され、1セクタ単位に
格納する情報が決められています。
セクタ0:基本的な情報と、トラックの開始アドレス、終了アドレス
セクタ1:ディスクタイトル、トラックタイトル(アスキーコード)
セクタ2:各トラック録音年月日時分秒
セクタ3:ディスクバーコード、各曲のISRC(MDソフトのみ)
セクタ4:漢字使用可能なディスクタイトル、トラックタイトル(シフトJIS)
セクタ5〜31:未使用(未定義)
※基本的に必修セクタは0番のみで、それ以降はメーカー選択。
※現在は1〜4番までがメーカー間で統一されているようですが、
※そのMDシステムが使用するか、しないかはメーカに委ねられます。
※残りは未使用(未定義)です。
でも、255曲(トラック)も録音しないよ。と言う声が聞こえてきそうですが、
あくまでも最大なのです。条件によってはそれ以下になると言うことです。
MDはランダムアクセスできるおかげで、途中の曲を削除したり、隣り合ったトラックを
結合したりして編集することが出来ます。そのためディスク上には同一のトラックであるにも
かかわらず、1曲の曲がシーケンシャルではなくバラバラに点在していることがあります。
これを管理するのが255個の管理スペースなのです。
MDでは連続するデータを1つの固まりとします。1曲のデータがすべてディスク上に連続して
存在している場合、1トラックとして管理されます。しかし編集を重ねることである音楽を
録音したとき非連続状態で2カ所に分断されて記録されたとします。するとMD内部では
次のように管理されます。
「トラックXaのアドレスはxxxx1からxxx20まで」
「トラックXbのアドレスはxx100からxx210まで」
ディスプレイ上のトラック表示はX番としてa,bの区別なく表示されますが、
内部では2つの管理スペースが使用されることになるのです。
255個の管理スペースは255曲(トラック)録音できることではなく、
255個の分断されたデータを管理できると言うことです。
また、この1管理スペースで管理できる連続データの大きさは、6クラスタ単位になります。
連続するクラスタが6未満の領域の場合、MDでは管理できなくなります。
MD機器のマニュアルなどで12秒以下の空きエリア、もしくは曲を編集することが
出来ない場合がありますと言う注意文はこの管理制約から来ています。
(6クラスタ×2.0432秒=12.25秒)
この2セクタはタイトル入力用のセクタです。
なぜ1と4なのかは漢字タイトルのルールが出来たときに空いていたのが
セクタ4だったのだと思います。
セクタ1にはアスキーコードで記録されます。
セクタ4にはシフトJISまたはISO-8859-1で記録されます。
双方1セクタ分の容量、2332バイトあります。
アスキーですと1文字1バイトなので2332文字入りそうですが、
トラック管理などで使用される分があったりするので
制限として、約1700文字(約というのはかなり曖昧なので)と制限されます。
さらにカタカナでは内部ではローマ字表記で処理されているので、
カタカナ開始、終了コードで2文字、母音なら1文字、子音なら2文字使用します。
その結果、上限の文字数以下しか入力できない場合があります。
個々のセクタは独立していますので、文字の入力(記録)は別々に行われます。
セクタ4に文字入力してもセクタ1には反映されません。またその逆もそうです。
カタカナの文字入力は今となっては当たり前になっています。カタカナはセクタ1
領域にアスキーコードにより記録されるのですが、カタカナの文字コードがあるわけでは
ありません。カタカナ文字入力されたディスクを非対応のデッキで再生すると分かると
思いますが、ローマ字で表示されます。(全て大文字、ただし「ん」は小文字の「n」)
なかなか工夫されたアイデアであります。ではカタカナと英文字の区別はどのように
行われているのでしょう。ローマ字表記の際、文字列の中に「^」の記号があると思いますが、
これがカタカナ開始(終了)コードなのです。あれ?と思う方もいらっしゃると思います。
そうです、英数カタカナに関係なく「記号」の中に「^」もあるのです。
カタカナ開始(終了)コードは機器を制御するためのコードであり、文字を表示するための
ものではありません。しかしカタカナ入力をすると、このコードも一緒に入力されますので
カタカナ非対応のシステムでは表示の際、文字化けをする恐れがあります。そのため、
あえて文字としての意味の薄い「^」を表示しているのでしょう。(推定)
カタカナ文字がはじめて採用されたのはビクターの「XM−D1」です。
「XM−D1」は大型液晶ディスプレイの付いたミニ録音システムです。そしてその後
各社からカタカナ対応のシステムが発売されたわけですが・・・。
私もうる覚えでしかないのですが、
カタカナは「XM−D1」で始まりましたが、その後に発売されたシャープの
機種ではシャープのフォーマットが登場し、各社それにならえになったと
記憶しています。ちょっと信憑性が薄いですね。
1サウンドグループの時間は「512サンプル/44100Hz=11.609ミリ秒」
2セクタの時間は「11.609ミリ秒×11サウンドグループ=127.7ミリ秒」
ゆえに、1セクタの時間は「127.7ミリ秒/2セクタ=63.85ミリ秒」
1クラスタの時間は「63.85ミリ秒×32セクタ=2043.2ミリ秒」
74分MDのオーディオ記録エリアは「0032〜08CC」なので
「08CC(16)−0032(16)=89A(16)=2202(10)」
2202クラスタあることになります。
したがって、「2202クラスタ×2043.2ミリ秒=4499126.4ミリ秒」
4499126.4ミリ秒=74分59秒
74分MDの録音時間74分59秒となります。
CDなどでおなじみのリニアPCMの計算ですと
1秒間は「16bit×44100Hz×2(左右)=1411200bit=176400バイト」
MDのスケール(1クラスタ=2.0432秒)に合わせるため2.0432倍します。
「176400バイト×2.0432=360420バイト」(リニアPCM時の2.0432秒での情報量)
以下はMDの情報量計算です。
MDの1クラスタは32セクタ×5.5サウンドグループ=176サウンドグループなので
「176サウンドグループ×424バイト=74624バイト」
よって「360420バイト/74624バイト=4.8298」となり、
MDの実際の圧縮率は「1/4.83」であることが分かります。