(続)ATRACの周波数カット分析
異なるATRACバージョンでの再生検証
Lab-03-2

ご注意
 
ここに書かれている方法は、私こと「ぷわりす」が自己責任において行ったものであり、
各メーカーならびに各ホームページ関係者には一切関係有りません。
そのためご質問等がある場合は、私「ぷわりす」にお願いします。
 
また閲覧しているユーザさんが同様のことを行って発生したトラブルについては
私「ぷわりす」ならびに各メーカーには一切責任はありません。
自己責任で行って下さい。

1.はじめに

 ATRACの互換性がよく言われますが、低バージョンで録音したものを高バージョンで、
逆に高バージョンで録音したものを低バージョンで再生した場合、ディスクに記録された
情報はちゃんと復元されるのでしょうか?巷では24bitATRACだとか言っていますが、
再生専用機で24bitATRACがウリになるのでしょうか。ここではそれを「ATRACの周波数
カットの分析」と同じ分析方法で検証してみたいと思います。

途中注釈がありますのでご注意下さい。


2.準備

・サンプル曲・・・宇多田ヒカル「First Love」より2曲目「Movin' on without you」
・使用ディスク・・・「TDK XA-PRO 60」
・使用デッキ・・・「MZ-1」「DM-9090」「DP-5090(CD Player)」
・サウンドカード・・・SoundTrack128 Ruby + Degital I/Oポート
・アナライズソフト・・・efu氏作成「WaveSpectra」
  


3.データ作成

Step1:CDからMDに録音
 これはいたって普通に録音。DP-5090から光ケーブルを用いてMZ-1およびDM-9090に
デジタル録音。光ケーブルを使用しているのは統一した転送方法にするためです。

Step2:CD、MDの音楽をパソコンに読み込み
 MD機器、CD機器を光ケーブルにてパソコンのサウンドカードに接続。
パソコンのレコーディングソフトを録音状態に、そしてCD、MDを再生状態にして
各音楽をWAVファイルに変換。

Data1:CDデッキ「DP-5090」からCDの音楽情報をWAVファイル化(比較用マスター)
    DP-5090→サウンドカード→WAVファイル

Data6:MZ-1(ATRAC1)でエンコーディング、DM-9090(ATRAC4.5)でデコーディングされたデータ
    DP-5090→MZ-1 > DM-9090→サウンドカード→WAVファイル

Data7:DM-9090(ATRAC4.5)でエンコーディング、MZ-1(ATRAC1)でデコーディングされたデータ
    DP-5090→DM-9090 > MZ-1→サウンドカード→WAVファイル

まぁ手順等はともあれ、各データの特徴です。

Data1:データ1,2,3が同一条件になるようにサンプルしたCD直のデータ
Data2:ATRAC Version1により圧縮されたデータ
Data3:ATRAC Version4.5により圧縮されたデータ
Data4:PCレベルでのCD直のデータ
Data5:MP3データ
Data6:ATRAC Version1により圧縮、ATRAC Version4.5で伸長されたデータ
Data7:ATRAC Version4.5により圧縮、ATRAC Version1で伸長されたデータ

※なお、作成された音楽情報(WAVファイル)は音量(dB)など直CDデータとは異なり小さくなってしまいました。
※そのため、直CDデータもサウンドカード経由のWAVファイルと同じレベルにするために、音量を53%にしています。
※しかしスペクトルの形には影響しておらず、同一条件下と言うことで比較しております。
※説明上、dB値などは表示されているものを使用します。


4.各音楽情報を分析

 各WAVファイルを「WaveSpectra」にてスペクトル分析。サンプルしたタイミングは
曲開始から28秒後付近、「アァッ、アァッ」というコーラス部分、バックでタンバリンが
「シャン」と鳴る一瞬のところです。(このタンバリンは定期的に鳴っているものです)
CDをお持ちの方は是非確認してみて下さい。著作権的にデータをアップすることはありません。
また手動にてターゲットポイントを見つけているので「100%ジャストポイント」ではありません。

Data1:CD直のデータ

Data2:ATRAC Version1により圧縮されたデータ

Data6:ATRAC Version1により圧縮、ATRAC Version4.5により伸長されたデータ

Data3:ATRAC Version4.5により圧縮されたデータ

Data7:ATRAC Version4.5により圧縮、ATRAC Version1により伸長されたデータ

もう嬉しいぐらいの結果が出ています。
ほとんど見分けが付かないぐらいのスペクトル分布になっています。
(微妙に違うのは誤差ということで・・・)

 結果から言ってしまいます伸長はATRACバージョンにほぼ依存しない
具体的に細かい音質面を検証すると違いがあるのかもしれませんが、ここでは高域の再現性
について考えています。つまり、ATRAC Version 115kHz以上の音を圧縮していない(出来ない)
から15kHz以上のデータ(ATRAC Version 4.5で圧縮された15kHz以上を持っている音楽データ)
伸長できないことはない、ということです。

 またその逆に低いバージョン(ATRAC 1)で録音したものは、いくら高バージョン(ATRAC 4.5)で
再生しても、そもそもディスクに記録されていないデータ(15kHz以上)は伸長されない、
と言うことにもなります。


5.結論及び考察
 
 この検証をしたのは掲示板でのやりとりからですが、「MDは圧縮が命」の証明でもあります。
デコード(伸長)自体はディスクに記録されたデータを規約通りに組み立てる作業をしている
だけですので、基本的にはバージョンの差によって結果が異なることはないのです。ただし、
演算能力に違いにより、上記スペクトル分布分析では見いだせない違いはありますので、
現実的には差が出てくることをご了承下さい。

 やはり高級機と中堅・普及機との差は「アナログ」を扱うところの品質の差が、
デジタル機器には顕著に現れます。極端な話MZ-1のアナログ周りがとてつもなく強力だったら、
MZ-1自己録音・再生するよりも、Version 4.5で録音したディスクを再生した方が
遙かにいい音になることが予想されます。
(別実験でMZ-1を別D/Aコンバータ、当方だと(KRF-V7771D)に接続して検証してみます)

 このように圧縮時のATRACのバージョンは、再生時の音の品質を決定してしまいます。
すでに録音機をお持ちの方は予算的に買い換えは出来ないと思いますが、これから
購入を予定されている方は、ATRACにこだわってみてはいかがでしょうか。と言っても、
最近はほとんど最新ATRACを搭載していますので、特に注意する必要は無いですね。
それよりもアナログ周りのしっかりした機器をお選びすることが重要ですね。


6.分析等に使ったプログラム

・efu氏作成、高速リアルタイム スペクトラムアナライザ!「WaveSpectra」
 http://www.ne.jp/asahi/fa/efu/
 



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